猫のミミ

これは、福岡に住んどる孫娘から聞いた話じゃ。孫の家のとなりに、わしより年上のおじいさんと猫が1匹住んでおったらしい。

そのおじいさんは80歳だったかのう。猫の名前は“ミミ”。メスで普通の猫よりも耳が大きかったので、おじいさんが、そう名づけたそうだ。

ミミは、おばあさんが亡くなって2か月くらいあとに来たそうな。

おばあさんは生きていたころ、大の世話好きで、ひとり暮らしの孫に、となりのよしみじゃからと言うて煮物を持ってきたり、家へ食事にさそったりしてくれとったらしい。そんな優しいおばあさんじゃったが、認知症にかかり、最後は肺炎で亡くなったそうじゃ。それからおじいさんは家に引きこもりがちになったらしい。

 

そんなおじいさんを孫が心配してのう、思いきって、となりを訪ねていったんじゃ。

元気づけようと、いろんな話をしたあと、ふと、あることを思いついた。

「ところで、おじいちゃんは猫好き?」
「そらぁ好いとるよ。ばあさんも猫が好きでな。そう、十年くらい前までは、この家にもしましまのオス猫がおったんじゃ。名前はシマオ。ばあさんはその猫に向かって、朝から晩までしゃべりよったわ。シマオも、ばあさんのあとばっかりついて、ミャーミャー応えとった。わしはもう歳じゃから猫を飼うのは卒業したんじゃ」
「うーん、そんなことないよ。動物愛護管理センターには、引き取り手のない猫ちゃんがたくさんいるから。私にまかせて。おじいちゃんにピッタシの、かわいい猫をしょうかいするよ」