もくもくと瓦礫を処理している人もいる。どこを見てもぐちゃぐちゃの景色に変わっていた。

歩きつかれて、くたくたになったから、とりあえず半分しかこわれていない家の中に入りこんだ。だれも住んでいなかった。

当分ここにいることに決めた。食べ物も何もなかった。暗くなると、しずかな中に夜空のお星様だけが、いつもよりキラキラかがやいて見えた。

つぎの日、近所の人たちが、どこかへぞろぞろと歩いている。何だろうと、ぼくもあとをついていった。

みんな並んで食べ物をもらっている。お腹が空いて何か食べたかったけど、自分たちのことでせいいっぱいらしく、ぼくを見ても、だれも関心を示さなかった。みんな、ぼうぜんとした顔になっている。

つぎの日も行列が続いた。行列の先には、おいしいにおいがただよっていた。3日目に知らないおばさんから声をかけられた。

「お前はむぞらしか(かわいい)首輪と鈴ばつけとるばってん、飼い主から離れたかい。かわいそうになぁ。ここには猫ちゃん専用の食べ物やらはなかったい。ばってんが、おばちゃんのにぎり飯ば、ちぃーと(少し)食うてみらんかい」

そう言って、おかかの入ったおにぎりを分けてくれた。ぼくは天にものぼるうれしさで、「ミャオミャオ」と言いながらガツガツ食べた。翌日も、またその翌日も、おばちゃんがおにぎりを分けてくれた。

ところが4日目には、おばちゃんはあらわれなかった。いったい何があったんだろう。