3章 世界のパラダイム

ビフォアコロナ アフターコロナ

7 利己的から利他的へ​

みんなが利己的であれば対立が増加するのは明らかです。相手を理解しようとしない態度では、家庭で、学校で、会社で孤立します。また国家が孤立することになります。

最近の世界は、利己的で激しい競争をしているのはみなさんご承知のとおりです。米中の対立は、あまりにも見苦しい水準まで落ちてきました。世界の指導者たる二つの大国がこの体たらく。人類はほんとうに不幸だといえます。米国の自国ファーストは末期的様相を呈しており、中国にいたっては“共産党王朝”が植民地時代の意趣返しに躍起になり、妄想状態と言わざるを得ません。

アメリカ大統領は、政治、経済、法律、行政、外交、安全保障のすべてを利益の対象に仕立てようとしているかにみえます。トランプ氏の物差しは、儲かるか、儲からないか。政治、経済、文化、歴史など複雑に絡み合う要素を切り捨て、儲かるか儲からないかという基準だけで国益とするという定義に浅薄さを感じずにはいられません。

人は、パンのみで生きているわけではありません。同盟国、非同盟国、どの国とも対立するアメリカ・ファーストが空虚に聞こえ、政策の整合性も、継続性もあったものではありません。

儲かるのか儲からないのかということだけに関心があるビジネスマンが、国家権力の頂点にのぼりつめてしまったという現象は、まことに、困ったものです。国家が個人と同じように感情で動くようになってしまったのです。「我々の個人的な願望に合う事柄は、すべて真実のように思われ、そうでないものは、我々を激怒させる(アンドレ・モロワ)」(出典:「道は開ける」デール・カーネギー 創元社)。

こうした人との対話は成り立ちません。最初から答を決めている人なのです。

国家がおかしくなっているだけではありません、企業、個人もおかしくなっているのです。新型コロナによって激しく傷んだ経済を立て直すために、政府は大規模予算を編成し、持続化給付金で事業者を支えることにしました。ところが給付事業の委託を受けた団体や企業が、ここぞといわんばかりに委託金を中抜きをするという出来事を見ますと、日本全体が苦しんでいる最中、よくもここまでとあきれます。