しかし、大多数の日本人は、誠実です。ただ、不誠実で不正直な人がたとえ少数でも、日本社会全体に対して計りしれないほどのネガティブなインパクトをもたらしています。正直者は弱いのです。
昭和の哲学者、安岡正篤氏はこんなことを述べています。
「世の善人と悪人とをくらべてごらんなさい。善人はたいてい引込み思案、消極的で、傍観的であり、団結しない。自然の草木と同じように自ら生きる。他に待たないものです。悪人は猛々しく深刻で、攻撃的積極的であり、必要に応じてよく団結します。私は昔からいろいろの機会に力説してきましたが、悪人は一人でも『悪党』と言います。それじゃ善人をさして彼を『善党』だとは言いません。悪党という語があっても善党という言葉は使わない。だから悪党と善人では一応善人側が負けるものです」。(出典:「安岡正篤 一日一言」安岡正篤 致知出版社)。
まさに現在の日本の状況を言い得て妙です。私たちはあまりにも拡散しすぎた価値観の中から、そろそろ普遍性を見出さなければならないのではないでしょうか。誰がみても正しいこと。カントが定言命法でいった、「いつでも、どこでも、誰にとってもよいといえないときは悪いこと」を考えてみる必要があるのではないでしょうか。
また自分さえ儲かればよいというグローバル資本主義が地球を破壊し、企業の唯一の目的は利益を出すことだけであるとした経済理論が、人間性を喪失させたことに全世界のすべての企業がそろそろ気づかなければならないのではないでしょうか。