その時だった。

ボーンッという激しい爆発音とともに、火炎瓶がその兵士を直撃した。

「ぎやああああーーーーーーっ」

一瞬にして全身が炎に包まれた兵士は、叫び声を上げ、その場で転げまわった。大きな炎の塊が叫び声を上げながら地面を転がり、劉温来の目の前で動かなくなった。灯油の臭いと髪の毛が燃える臭いが鼻を突く。劉温来は、燃え上がる車と動かなくなって炎の塊と化した兵士から離れようと立ち上がった。

その時だった。

「日本人の犬」

叫び声が聞こえ、後退していく群集から抜け出した一人の男が、奇声を発しながら火炎瓶を劉温来に向けて投げつけた。

ヒューーーーーッ

不気味な音を立てながら、火炎瓶が劉温来に迫る。

劉温来にも火がついた火炎瓶が、まっすぐに自分に向かって飛んで来るのが見えていた。

後ろには激しく燃える車があり、左右は動かなくなったまま炎に包まれている秘書と兵士に挟まれ、逃げ場がなく、劉温来は自分の体が炎に包まれることを覚悟した。

その時、目の前を黒い影が横切り、飛んでくる火炎瓶の前に立ちはだかった。

ガチャーンッ

ボーンッ

火炎瓶が割れる音がして、劉温来のすぐそばで炎が広がった。