閉じたカーテンからこぼれる薄日の中で、濡れた胸毛がべったりと貼りついている。腹毛も濡れ、ずれたパンツも濡れ、はみ出した陰毛も滴り肌に纏わりついている。まだ暑い季節でもなく、裸の胸や腕に鳥肌が隆起してくる。

床に入る時には着ていたはずの寝間着を手を伸ばして探ると、右手の先に丸まったトレーナーが当たる。

まただ、あの遭難事故以来、こんなことが続いている。同じような夢と、その夢に苦しみもがく浅い眠り。また深く息を吐いて、頭を掻く。いくら掻きむしっても頭皮の快感が足りないので、手を広げるとやはり、三本の指はない。左手を広げてみても、二本ない。拳にして力を込めてもやはり締まる感覚はない。

足の指はどうかと力を入れてみるが、やはり指はない。当然、指が広がる感覚はなく、薄暗い布団の上で丸まった足先がモゾモゾともがくだけ。目を凝らすと、それは象の足のように丸く、やや腫れた肌が何かの拍子ですぐに破れそう。

結局、凍傷の切断面だけ、夢ではない。

起き上がろうと足を折り尻をずらすと、パンツがさらにずれる。露わになった男根は、そこまでテラテラと汗で濡れ、グロテスクにだらんとしている。あの遭難事故をくらう前は、どんな朝でもこんなにだらしなくはなかった。また溜息をついてパンツをずり上げ、風呂場に向かう。

 

▶この話の続きを読む
登山の事故で彼は死んだ——「処分してもらって構わない」。彼の妻は遺品を受け取らなかった。葬儀の際、その表情には……。

👉『小窓の王』連載記事一覧はこちら

【イチオシ記事】どのような経緯で二人きりになったのか、どうしてホテルに行くことになったのか覚えていなかった

 

ゴールドライフオンライン(GLO)は、表現者を応援するウェブメディアです。
生身の人間が紡ぐリアルな言葉だからこそ、読者の心を揺さぶる力があると確信しています。
あなたも、"表現者"になってみませんか?
ゴールドライフオンライン(GLO)編集部:glo_henshu@gentosha.co.jp