(村木)
私は何をどう話そうかと考えて、数日悶々とした日を過ごしました。
彼女の気持ちを傷つけないようにと気遣いながら、教室が終わった頃を見計らって、勇気を出して声をかけました。
「今ちょっと、お話大丈夫ですか?」と言って、アコーディオンカーテンを開けると、「はい」と返事がありました。後片付けをしていたようです。
「このあいだ書類をアパートに送って、メールでもお知らせしたはずですが、届いていますか? お返事がないので気になっていたのです」
「いえ、知りません。後で確認します」
「いつなら確認のお返事が頂けますか?」
「二週間後くらいになります。もう帰るので……」
「そんなに! なるべく早くお願いしますね」
迷惑そうなオーラと返事に、それ以上話せずに引き下がってしまいました。
もっとよく話し合いたかったけれど、取り付く島もありません。
彼女は挨拶もなく、黙って帰ってしまいました。
一体私のどこが気に入らないのだろうと思っていると、私のケイタイにメールが入りました。帰りの電車の中から送信したようです。
「前にも話しましたが、時間内の教室に勝手に入らないようにお願いします」
時間内って。レッスンも終わって子どもが帰った後ですし、彼女が帰る前でないと話す機会はありません。何と高飛車な言い方でしょう。
これでは話し合いどころか、水と油の関係です。事態は悪化するばかり、もう私もあきらめて、そっと成り行きを見守る以外ありませんでした。
二週間後に彼女からどんな返事が来るかは、まったくわかりません。