この章を読み終える頃には、「建築=経営の成長を加速させる装置」という意識が明確になり、空間づくりを経営戦略の中核に据える準備が整うはずです。
短期節約か、長期利益か——経営者が選ぶべき視点
「できるだけ安く建てたい」――建築計画を始めるとき、多くの経営者がまず考えることです。
これは経営判断として自然なことですし、無駄な豪華仕様を避け、コストを管理する姿勢はむしろ不可欠です。
しかし、この「コスト削減」だけを絶対条件にしてしまうと、完成した建物が本来持つべき価値、すなわち経営資源としての力を大きく損なうリスクがあります。
たとえば、設計や素材を【安さ】だけで選んだ場合―
●限界まで面積を切りつめてコストを下げた結果、実際に使ってみると動線が悪く、社員や利用者のストレスが増える
●安価な素材のみで仕上げた外観や内装の印象が乏しく、顧客や応募者に魅力を感じてもらえない
●コストを下げるために形状を簡略化しすぎたためにメンテナンスや修繕が頻発し、長期的に維持管理費がかさむ
こうした事態は珍しくありません。
表面上は「安くできた」と思えても、結果的に生産性の低下、顧客離れ、人材流出といった形で経営に影響し、長期的な損失を招くことがあります。
建物は一度完成すると容易に造り直せません。
だからこそ、「安く建てる」だけでなく、「何に投資すれば長期的な成果につながるか」という視点が不可欠なのです。
