私がこの3年間でやったことを棚卸しすると、まあ、すごい。

標的にした人間の数。弱みを握って黙らせた回数。自分の居場所を守るために誰かの居場所を削った夜。便利な道具として使った関係。使い終わって静かに遠ざけた人間。家出先で出会った男たちの顔。ビジネスホテルの白い天井。シャワーのお湯が排水口に消えていく音。

虐めて、詰って、脅して、春を売る。これを全部、神様とやらが採点したとしたら、どの宗教のどの基準で測っても、私は赤点まっしぐらだろう。煉獄行きどころか、直通で地獄の業火に焼かれるのみ。本山優子が言った通り、地獄に落ちる。

そう考えた時、不思議と怖くなかった。

後悔もなかった。自責の念というものが、どこにも見当たらなかった。遅すぎる懺悔の欲求もなかった。

代わりに何があったかというと、開放感だった。

肺の底まで澄んだ空気が入ってくるような、あの感覚。

地獄に落ちるなら、もう取り繕う必要がない。今さら善人面して善いことをしてももう溜まりに溜まった借金は返せない。どれだけ徳を積んでも、このマイナスを帳消しにできる気がしない。

だったら話は早い。

今から善行を積む理由が、消えた。

損得で動いてきた人間が、損得の計算をした結果、善行に意味を見出せなくなった。これは論理的な帰結だ。筋が通っている。むしろ清々しいほどに。

どんな汚い手を使っても構わない。欲しいものを手に入れる。踏みにじっても構わない。行きたいところに行く。地獄に落ちるのが確定しているなら、その前に現世で目いっぱい良い思いをして、そしてあの人が言った通りに地獄に落ちて、そこで目いっぱい苦しめばいい。

地獄に落ちたら真っ先に閻魔大王へ「私は0点の人生を歩んできました」と馬鹿正直に言ってやろう。そんで、舌を引っこ抜かれようじゃないか。

そもそも、血の池地獄の熱湯に落とされようが、針山の上を永遠に歩かされようが、現世を生きる私には関係ないのだ。将来の自分なんて嫌った方がいい。将来を思いやるほど、今に満足していない。

その計算をしながら、口角が上がった。笑いたいわけじゃなかった。でも上がった。条件反射かもしれない。

次回更新は8月3日(月)、16時の予定です。

 

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