カフェでずんだ餅のデザートとコーヒーを味わい、帰路についた。夕飯には少し早かった。
ホテルに戻って少し自室で休むことになった。
「じゃあ、またあとで」
夕飯も一緒に食べるのが当たり前のようにそう言うと、咲元は隣の部屋に消えた。紫も部屋に入るとお土産を整理し、すっかり汗をかいたシャツを着替えた。すると隣から何やら話し声が聞こえてきた。
えっ、まさか……戻ってきたとか? 思わず壁に耳を付けた。しかし内容までは聞こえないし、どうやら電話のようだ。
紫は早々に壁から離れてベッドに横たわると、ちょっと興奮している自分を恥じた。こんな風に、思いがけず気の合う男性と過ごせたことはラッキーだったが、ただそれだけだ。あくまで友達感覚なんだ。あまりのぼせてはいけない。
だって彼からもそんな空気は全く感じられないし、自分はあまりにそういうことから遠ざかった生活をしていたから、そして旅先という非日常だから、お互い一人だから、ちょっと楽しんで、それで終わりなんだ。
なら、あと夕飯だけ、今日一日だけ楽しもう。そう思った。だって咲元は明日帰るのだ。紫はもう一日いる予定だった。あと数時間だけ、彼の連れは私だ。
一時間ほどしてドアがノックされた。二人はホテルのレストランへ向かった。昼は和食だったので洋食に、となった。
「紫さん何がいい?」
「ハンバーグステーキ食べたいかな」
「いいね。紫さんのよく食べるとこ、美味しそうに食べるとこ、気持ちいいよ」
少しさっきの電話が気になった。でも彼女とは限らない、仕事かも知れないし、聞き耳を立てていると思われるのも嫌だから、聞くわけにもいかない。
「明日、何時に帰るの?」
「十時の新幹線だよ、今日はありがとう。紫さんのおかげでこの旅行が楽しめた」
「確かに、あのままじゃ台無しだったかもね」
「全く、仙台が嫌なイメージに終わるところだったよ。一杯どう?」