頑張らなくちゃ
初出勤日の朝を迎えた。少し早めに目覚めた僕は、昨日のうちにコンビニで買っておいたパンを野菜ジュースで流し込みながら、テレビを眺める。新年度の始まりということで、テレビの中で話すアナウンサーもどこか気合いが入っているように見えた。
食事は終えたけど、家を出るにはまだ少し早い。早くその時がきて欲しいような、まだきて欲しくないような、相対する感情をかき消すように閑散としたワンルームを行ったり来たりした。荷物を持って家を出てエレベーターに乗ると、(いよいよ始まるんだな)という実感が湧いてきた。
1階まで降りる途中、スーツを着た若者が何人か乗り込んで来た。みんな硬い表情をしている。このマンションは新築だ。おそらくほとんどの人が今日が社会人としての仕事始めなのだろう。
病院に到着すると、守衛の中年男性に声をかけ、医局まで案内してもらう。数年前に建て替えられたというこの棟は15階まであり、ワンフロアも広い。慣れるまでには時間がかかりそうだ。
医局の座席は、ここからここは外科、ここからここは内科、というように科ごとにまとまって配置されていた。外科の医師の座席が集まっているところまで案内されると、まっさらな席があり、そこには山川医師と書いた紙が置かれている。ここが僕の席のようだ。両脇の机を見ると、外科の専門書がびっしりと並んでおり、机の上は書類で溢れ返っていた。
(みんな、忙しいんだろうな)
そんなことを思いながら自分の机に荷物を置いて、回転式の椅子に座って高さを微調整する。