【前回記事を読む】不審な死を遂げた副社長のことを調べていると、社長から「話がある」と呼び出し…ドアを開けるとそこにいたのは…

第2章 粛清

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世間でよく言われる「二代目が会社を潰す」という言葉は、統計でも都市伝説でもなかった。彼自身の背中にずっと突きつけられてきた予言だった。だが彼は、その言葉に耳を傾けることはなかった。

会社は株式会社とはいいながら、実態は東雲一族が支配する同族経営だった。東雲一族がすべてを決め、すべてを支配する。信じたのは、自分の判断と自分の成功体験だけだった。その様子がどこかの国の体制によく似ているせいか、裏では社長を「独裁者」の名で呼ぶ社員や役員もいるという。

しかし、表立って逆らう人間は誰一人なく、社員たちは皆自分の立場や他社よりも高い給料のことばかり考えている。おそらくこの男に面と向かって意見できたのは加納だけだったはずだ。

「加納副社長の死は本当に残念だった。日々、会社のために尽くしてくれた彼には、どんなに感謝しても感謝しきれない」

感情のまったく入っていない言葉を並べる東雲に、内心怒りを覚えながらも柊は淡々とした表情で頷いてみせる。

「ただね、柊さん。彼のことはもう終わったことだ。あれこれ騒ぎ立ててもご遺族の迷惑になる。優秀な右腕を失ってたいへん残念ではあるが、ここはもう忘れるべきだろう」「忘れる」。その言葉が柊の胸に鈍く刺さる。

「分かりました。ただ加納副社長が担当していた案件については、確認のうえ報告しませんと」

柊の切り返しに、東雲は一瞬目を泳がせる。が、すぐに作り笑顔を浮かべて答えた。

「相変わらず堅いね、君は。それはそんなに重要なことじゃないだろう」

「そうかもしれません。ただ万が一、調査が入った場合の対応を準備しておきませんと。痛くもない腹を探られるのは社長も本意ではないのでは?」

「そういう考え方もあるだろう。だが会社は船だからね。多少の水漏れがあったとしても、船長が堂々としていれば決して沈むことはない。そういうものだ」

無意識に語尾が上がり、自分に言い聞かせているようにも聞こえる。相変わらず論理的な話ができていない。本人だけが勝手に納得していて、結局何が言いたいのか分からなくなっている。

「その船長に正確な情報をお伝えするのが、顧問としての私の役目です」