宇宙の虚無の空間にすら、凛然とした恒星が存在する。必然の光はなぜ、自分の人生行路を照らしてはくれないのか。

ジュランは終わりのない苦悶の暗夜の理由を問うことに疲れ果てていた。トンネルには出口があると信じていた。しかし、底なし沼の如く、彼女の苦悩に終息はなかった。悲痛をかき抱き、為す術もなく、彼女はうつろな目を水鏡に落としていた。

自らの苦渋と通じるものが沼に宿る親密さに似通っていると感じていたとき、彼女は指呼の間でぬるんだ泉が湧き出していることに気づいた。成り行きに任せて上体を傾け、歩み寄っていった。過去と現在の接点が無意識の中でつながろうとしていた。

足が泥の淵に差しかかったとき、奇怪な現象が起きた。

〈沼が動いた?〉

幻を見ているのだろうかと疑った。緩やかな春風に乗って、ハープなのかオルゴールなのか判然としない、柔らかな金属音が聞こえてくる。

〈何かが泥の下に潜んでいる?〉

彼女は月光に照らされた水面を注意深く覗き込んだ。突如、水中から沼一面に強い光が突き上がり、ゆったりと渦を巻き始めた。雄大なうねりと不可思議な音色。驚く間もなく気怠い眠りに襲われた。積もり積もった半生の疲れがどっと溢れ出し、まぶたが自然に閉じていく。渦は次第に大きくうねりを上げていった。

「迷宮入りする謎とはこの渦巻きのこと……」

意識が遠のき始めた彼女は夢うつつで独り言を言い、奇妙な安らぎに我を忘れて沼の渦中に足を踏み入れた。そのまま何の疑念もなく螺旋の渦に巻かれ、心地よい眠りに落ちていった。

彼女は底なし沼に沈み、現し世の涯てを超えて未知の深みへ溶け入った。

次回更新は5月8日(金)、7時の予定です。

 

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