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柊は都内の大学を卒業後、迷わず警察官の道を選んだ。理由は警察官だった父へのあこがれと、子どもの頃に描いた「正義の味方になりたい」というごく単純な想いだった。交番勤務だった父が帰宅したときに口癖のように言っていた言葉を今でも思い出す。

「困っている奴がいたらまず助けてやれ。理屈はあとでいい。義理と人情、そいつを忘れたら終わりだぞ」

幼い頃から聞かされていた柊にとって、それは警察官として、そして人としての指針となった。

警察学校卒業後、交番勤務を経て、柊は所轄の刑事二課に抜擢(ばってき)された。主に知能犯罪(贈収賄や詐欺、経済犯罪など)を扱う二課で捜査のイロハを学んだ柊は、情報収集と証拠集めに関する才能を発揮した。

そしてその一年後に、ある大物政治家の選挙を巡る贈収賄事件を担当することになった。泥臭い捜査を続け、ようやく、現職の国土交通大臣が国家プロジェクトを担う大企業から賄賂を受け取っているという確かな証拠を自らの手でつかんだ。

これで奴らの裏を暴ける――柊と捜査員たちは興奮を抑えきれずにいた。しかし、報告書を提出した翌日、柊は二課長から小会議室に呼び出された。二課長は柊に向けて淡々と告げた。

「柊、これはなかったことにする」

報告書を手にしながらそう告げる課長に、柊は愕然(がくぜん)とした。

次回更新は5月2日(土)、8時の予定です。

 

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