【前回記事を読む】そこには変わり果てた夫の姿があった…その場で死亡が確認され、警察は「自宅での不審死」と言ったが…
第1章 静謀
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恵子は顔を上げ、柊の目をじっと見つめながら告げた。
「私は会社に殺されたと思っています」
柊はその言葉を聞いてメモ帳をそっと閉じた。続いてファイルを開いてみる。ぎっしりと並んだ名刺には、会社名の左上に鉛筆書きで小さな★印がいくつかつけられている。
★〈星和コンサルティング〉内藤 俊
★〈共栄建設〉武藤 誠一郎
★〈神代ホールディングス〉神代 正義
いずれも聞き覚えのある社名ではあるが、特別引っかかるものはない。
「何か分かりそうですか?」
恵子がわずかに身を乗り出す。
「いや……でも奥さん、どうしてこれを私に?」
困惑した顔で柊は恵子に尋ねた。
「主人は、仕事の話なんて家では一切しませんでした。でも、柊さんのことだけは、本当にうれしそうに話すんです。柊さんなら何か分かるかなと思って」
まさか、そんなふうに思ってくれていたとは――柊の胸に熱いものがこみ上げる。柊は何も言えないまま、ただ小さく頷くことしかできなかった。