そこから僕は全ての終わりを覚悟したが、隆志は思いの外、普通に接してきた。
相変わらず喧嘩のこともそれ以来、一切触れないし普通に話しかけてくる。
村崎はそもそも初めから喧嘩のことなんか関係ないって感じだし、新一郎はあまり集まりに来なくなったが、表向きは僕らのグループは今まで通りだった。
でも僕はすごいコンプレックスを抱えるようになった。心にはずっと残っている。隆志のあの一言が。寝ようと布団に入ると、いつもちらついた。馬乗りで殴られて、「助けて」なんか言った自分の情けない姿が。
僕は、今までつけていた金のネックレスも、ゴツいピアスも外して、髪も黒にした。
僕が少しでもイキがったり、ヤンキーぶったりしたら、周りが心の中で笑うような気がしたのだ。
「本物になりたい」
村崎と夕暮れの海を見ながら、僕はポツリとそう呟いた。
「は? なに言ってんの?」
分かってんだ。自分がちっぽけな人間だって。
それを必死に隠してここまで来た。でも全部バレた。このままじゃ僕はずっとダサいまんまじゃないか。
本当にダメなヤツのまま、大学生活を終えていいのか。
「オレさ、ボクシングしようと思って」
「ボクシング?」
「強くなりたい」
村崎が思わず、笑った。
「ちょっと待って。お前もしかしてこの前の喧嘩が原因でそんなこと言いよる?」
「うん。あれがどうしても悔しくて」
「大学生だぞ、お前! 国立の!」
村崎の百二十%真っ直ぐ真っ当なツッコミが夕暮れの海に響く。
「え、なんかそういう喧嘩負けて強くなりてーみたいなのって、中学生とかまでじゃないの?」
全くその通りだ。でもオレはダメなんだ。
このまま何もしないと本当にダサいヤツのままになってしまうんだ。
「ダサすぎるって、それは!」
村崎は笑ってる。そういやこいつは高校時代の僕を見ているから、大学デビューしてることはとっくに気づいているはずだ。でも周りにも何も言わないってことは、そういうのに全く関心がないのか、ただただ良い奴なんだろう。
現に僕がこんなことになっても、笑って今まで通りに接してくれる。その優しさにも申し訳なくなってくる。
僕は真っ直ぐ海を見つめたまま答えた。
「今のままの方がダサいんよ」
次回更新は4月25日(土)、21時の予定です。
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本物になりたい。そう思いジムに入会する。会長はクラブに行って、一人でシャドーボクシングをして、それを笑ってきた若者をしばいているらしい。
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