路地を曲がりまだ閉まったままの真っ赤なシャッターを横目にカイはガラスのドアを開けた。打ちっぱなしのコンクリートで囲まれたイベントスペースには、まだ宴の前の暗さの中にカウンターバーが横たわり、ミラーボールが静かにカイを見下ろしていた。

夜のエロティックなステージのための準備をしているダンサー達がいるはずの真紅の天鵞絨(ビロード)で仕切られたカーテンの向こう側に、カイは声を投げ入れた。

「りえ! 持ってきたよ」

投げ入れたカイの声を聞き飛び出してくる姿があった。カイには何となく、いや、絶対的な予感があった。

「カイさ~~ん❤」

走り寄ってカイの硬い胸にいきなり抱き着く姿は、大きな真っ赤なリボンで胸を飾り、セパレートの超ミニスカートの衣装を身に纏ったミオだった。

ふと視線を下に向ければジューシーな胸の谷間があり、カイにはいつものことながらその衣装は、ほぼ裸同然に思えた。

「カイさん! バリアン行こう❤」

腰に手を回し、首を傾げながら見上げてくるミオを、いつものことだとカイは幼い子を宥めるようなまなざしで見下ろすと

「バリアン、この時間やってないんじゃないかな?」

嬌態を一色(ひといろ)も含まない声で宥めるように言った。

ミオは、拗ねたふりで頬を小さく膨らませた。

「うっそぉ~バリアン、ラブホだからいつもやってるよ」

「そうだっけ?」

おふざけを下地に素知らぬふりを装い、カイは軽く微笑んで見せた。

「カイさん、かっこいい」

ミオは抱きついているカイの引き締まった身体(からだ)に更に絡みつくとカイの胸に頬をすり寄せた。

「……ねぇ、カイさん、そろそろミオとエッチしようよぉ……ワンナイトでいいからぁ」

ミオは、嬌態に細い身体をくねらせ、甘い声で囁いた。

まだ紙袋を持たされたまま、まっすぐと腕を伸ばすカイは、顔を傾げミオの耳元に低い声を落とした。

「俺ね、りえとしかエッチしないの」

ミオは(つまんない)と言いたげに頬を膨らませ真っ赤な唇を尖らせていた。

「毎日、同じもの食べてるとぉ、あきちゃうよ」

瞳を潤ませながら見上げるミオのまなざしは、さすがフェム系ナンバーワンの人気ダンサーだけあって艶(なま)めかしかった。

カイはその艶(つや)を幼児の愛らしさに戻すように目を細めると、

「あきるほど喰ってないから」

もう一度抱きついたままのミオに顔を寄せてその耳元に囁いた。

 

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