二 痕跡に残る真実
令和七年六月某日。
その日、テレビのニュースで中部地方と中国地方の二つの地で、四人の容疑者が一斉に逮捕された。
表向きは、放火と保険金詐欺事件。
だが、私の耳に届いた情報は、それが単なる金銭目的の犯行に留まらないことを示していた。
舞台となったのは、誰にも使われなくなった空き家。そこに保険がかけられ、火が放たれ、請求がなされた。
だが、それだけでは終わらない。焼かれたのは建物だけではなかった。少なくとも一人の人間が、その炎の中で命を失っていた。
さらに、まだ表に出ていない火災があるという。
記憶にも報道にも残らない“隠された炎”が、確かに存在する。
事件の首謀者は、元不動産業の男(以降、朽木と記す)。
そしてもう一人は、元火災保険調査員の男(以降、羽柴と記す)。
この名前を聞いたとき、私は思わず椅子の背にもたれ、天井を仰いだ。
その男は、かつて私と同じく火災の原因を見つけ出す仕事に就いていた。
焼け跡を読み、痕跡に宿る真実を探し、遺族や保険会社に報告する──その責務を担っていたはずの男だ。
私は許せなかった。
知識を武器にする者が、その知識で真実を葬るなどということを。
火災の悲しみを誰よりも知っているはずの人間が、炎を操る側に回ったということを。
炎の痕跡は、嘘をつかない。
焼け跡の中に残されたわずかな証拠が、彼らが仕組んだ“事故”の仮面を剥ぎ取っていく。
私は再び、あの焼け焦げた現場に足を踏み入れる決意を固めた。
この物語は、炎と共に始まった。
そして、炎の中で終わるかもしれない。
だが私は知っている。
たとえすべてが燃え尽きても、真実は灰の中に、必ず残るのだ。
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