はしがき
「お勤め先は?」「はい、新宿歌舞伎町です」。長年一介のサラリーマンとしてお堅い金融関係の仕事をしてきた私にはなんともミスマッチな場所に今の職場はある。お堅い仕事に長年携わりながらも、私の頭からはなぜか言葉、特に日本語への関心が離れなかった。
詳細は本文に譲るが、最後の会社を退職後、念願の中国の大学での日本語教師を経験した。帰国してからしばらくボランティアや個人教授の日本語教師をしていたが、それでは物足りないものを感じ、大勢の学生を相手にするいわゆる日本語学校に就職した。
それが10年になる頃、この間の経験をもとに「私の人生における日本語教師の時期のメモワール」を書こうという気になった。
ところで今日本では「外国人」が大きなテーマになっている。留学生30万人計画で2019年に1年前倒しで計画が達成されたり、技能実習生などの制度により外国人労働力を導入するなど積極的で急速な外国人受け入れ政策を進めたりした結果、社会にさまざまな影響が出ている。
あまり知られていないが、そうした外国人が最初にお世話になる機関が日本語学校である。労働者の場合の統計はほとんどないが、少なくとも大学、大学院、専門学校などへの留学の場合、7〜8割の学生が日本語学校を経由していると推定される。
実はその日本語学校の制度も今大変革の時代を迎えている。そんな中でこのような個人のメモワールを書いてもと思われるかもしれない。
実際この草稿を持って、ある時たまたま住民として知り合いになった高名な日本語教育学者にご意見を伺いに行ったところ、「日本語教育の世界で50年に一度の変化が起きているこの時に、カビの生えたような過去の話を書いても意味がない」と酷評され、新しい日本語教育制度に重要な指針である「日本語教育の参照枠」をしっかり読むように言われた。