これは動かしようのない事実です。必須アミノ酸の吸収率がいい、短期間で筋肉がつくなど、プロテインに関する情報は洪水のように氾濫しています。今や何をどう信じればいいのか?
アスリートや指導者でさえも困惑しています。宣伝に惑わされている部分も大きいと思います。しかし、タンパク質自体に及ぶ代謝や化学反応において、ビタミンやミネラル、酵素などの働きを無視することは絶対にできません。それらの摂取量や質も同様です。
分子レベルで理解された栄養学、食事が体作りに反映されていれば、ケガをしない、病気をしない、予防というエッセンスも含んだ強靭な身体ができますよね。
ここで知ってほしいことがあります。テレビや雑誌などで放映されるのは、一流まで上り詰めた成功者ばかりです。しかし、こういったことを知らない指導者から教わって記録が伸びなかった人、伸びるどころか志半ばでケガや病気でリタイヤを余儀なくされた人、そして廃人と化して短命に終わった人、そういった人たちの方が圧倒的に多いということをわかっておいてほしいですね。
テレビや雑誌でクローズアップされる人たちのように、華やかで成功した人ばかりではないということを。
中村:あれは、ほんの一部の人ですものね。
溝口:大きな筋肉をつけてモンスターになる必要なんかないんです。私が指導したアスリートにはプロ野球選手、プロゴルファー、競馬騎手、サッカー選手、水泳選手、バレーボール選手、陸上選手など、いろんな種目の選手がいます。そういった中で、私がくどいほど言っているのが「柔軟性」「ライトトレーニング」「コンディショニング」「無事是名馬」という四つのキーワードです。
常に「ヒョウ(豹)のような機能的な肉体を作りなさい。少しでもピーク時が長く続き、なるべく衰えがくるのを遅らせる肉体を作りなさい。ケガや病気をしない息の長いアスリートを目指しなさい」と指導しています。もうこれは何年も前から絶対にブレない私の指導信念です。
腎臓や肝臓、小腸などの五臓六腑が正しく機能していなければ良質な筋肉は作れませんし、保つこともできません。先ほどもちらっと言いましたが、スポーツ選手が長生きできないという説も指導者として無視することはできません。その原因の一つに活性酸素の存在があります。
活性酸素といえば老化物質、ガンや病気の原因になっているということは周知の事実です。スポーツ選手はその活性酸素をハードなトレーニングによってたくさん作り出します。活性酸素を多く作るスポーツ選手はその活性酸素によって体の細胞にダメージを負いやすくなります。詳しい説明とまではいきませんが、なぜそういうことになるのか、お話ししましょう。