そういえばあなたのこと、母より先に亡くなった私の姉に感じが似ているって、だからついずけずけ話してしまうんだって、電話で言っていました、と不知火さんの息子さんは、最後に言って弱々しく笑った。

次の日はからりと晴れた夏の休日だった。掃除や洗濯を終え、夕方、日が陰ると、私はさっそく電動自転車に乗って買い物に向かった。自転車は、いつもなら三十分近くかかる坂道を、ものの十分ほどで転げおりた。

卵やら牛乳やら、いつもの買い物を終えると、前かごにそれらを積んで、電動自転車のスイッチを入れてペダルを踏んだ。自転車は、いつもふうふういってのぼる坂道をするするとおもしろいように進んでいった。すっかり陽が暮れて、少しひんやりした空気が頬をなでる。

その時だ。大きな音が、辺りにこだました。

一階に自転車を止めると、急いで団地の階段を駆け上がる。もどかしく靴を脱ぐと、リビングへ向かい、窓の外を見た。目の前の空には、まるで向日葵のような花火が、空を飾っていた。しかし、半分が木に隠れてしまっている。

私はリビングを出て、思いきってあの部屋のふすまを開けた。大きな音が連続して響きはじめ、いつか莉奈がかけてくれたカーテンを開けると、目の前には花火が次から次へと、帯のように打ち上げられるのが見えた。

なんとなく、誰かがそばにいるような、不思議な雰囲気を感じた。それは、決して嫌な種類のものではなかった。それを感じながら、私は飽きることなく、花火を見続けた。

大玉の花火がはじけると、誰かとともに手をたたき合っているような感覚を覚えた。その時、指にひっかけていた自転車の鍵が床に落ちて、花火のぼんぼんという音の間で、きらびやかな音を立てた。

そういえば、二〇二号室も、あの不動産屋規定の事故物件として掲示されるのだろうと、ふと思った。

そうだ、明日、息子に今月の仕送りをしてから、この部屋に向日葵を飾ろう、空を仰ぐ大きな向日葵を。

そう思うと、空に流れる花火を目で追い続けた。

本連載は今回で最終回です。ご愛読ありがとうございました。

 

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