次の日は週末の土曜日だったので、ふたりで明大前駅近くのカジュアルレストランへ、ランチを食べに出かけた。
「昨日の夜、言おうと思ってたんだけどね……」
と、かなえは切り出した。
「里紗は、もうちょっと、男の人の気持ちを考えたほうがいいと思うよ。距離が縮まってないうちから、お惣菜やビールあげたり、しつこく話しかけたりするのは考えものだよ。私が男でも、ちょっと引いちゃうかな」
「人間関係が昔から苦手で、恋愛もずっと片思いばかりだったよ」
「それは今までの話から感じ取っていたよ。今回のことはもう仕方がないから、これを教訓にしていくしかないよ」
テーブルには前菜のグリーンサラダ、コンソメスープが二人分置かれていて、それらには、まだ手がつけられていない。
里紗の恋は、中学生のときから高野さんまで七人、すべて片思いだった。行くところ、行くところで人を好きになっては、片思いのまま、いつも似たりよったりなパターンで終わることが多かった。
例えば、気遣いをしすぎて、逆に相手から嫌悪感を持たれてしまう、相手にはすでに彼女がいる、などのパターンだ。そして、好きになった相手には、お菓子などの消え物のプレゼントを、バレンタインデーだとか、お餞別(せんべつ)だとか、何かしらの理由をつけてあげていた。
せっかく入った銀行を三年で辞めてしまった理由も、同期の一人に片思いをしたことがきっかけだった。その人は、「今は、社会人としての正念場(しょうねんば)だから、仕事に打ち込みたい」と言っていて、里紗の想いには応えてくれそうになかった。
それでも諦めずにいて、しばらく経つと、なんとなく、その同期とのあいだに、気まずい空気が流れるようになった。それで里紗は、その想いを吹っ切るためにも、東京で自分の好きなことを見つけたいと考え、退職の旨むねを上司に申し出たのだった。
ビールの一件により、この恋はすべて終わった。夏になると、里紗は半ば逃げるようにしてアルバイトを辞め、派遣の仕事に専念した。
次回更新は2月1日(日)、21時の予定です。