INTRO
1978年~1984年の時代、経済状況は、石油ショックにより高度成長期が終わり、そしてバブル景気が始まる前という好景気の狭間のエアポケットの時代である。
文化的には、1970年代後半に学生運動が終息し、メインカルチャーに対抗するカウンターカルチャー自体の存在理由が希薄となり、その求心力が若者たちの中で失われていった。
それに代わって現れたのが、資本主義に対抗せず、むしろ受け入れて個人主義的に楽しみを享受するサブカルチャーである。
音楽ではニューウェイヴ、ニューミュージックというジャンルが台頭し、ファッションにおいてはDCブランドが現れ始める。
こういった70年代後期~80年代初期のサブカルチャーは、大量消費の波に同調し、ポップカルチャーへと拡大していったと考えることができるだろう。
アートシーンにおいても、ハイカルチャーに対抗する前衛芸術は大衆にはわかりづらいもので下火となっていき、80年代はより身近で多くの若者も享受できるポップなアートが隆盛を極める。日本映画もそれまでの重厚なものよりもポップなものが配給収入を上げていく。
重要なのは、この時期(1978年~1984年頃)のポップカルチャーが1985年頃以降のものとは、区別される特質を持っていることである。
ポップカルチャーというと、今では<大衆的な親しみやすいカルチャー>であるが、この時期のポップカルチャーはそれだけではない。
時代に先立つ時期のサブカルチャーが持っていた先進性、高揚感、緊張感、熱量を保ちつつ、大量消費の文化市場にも浸透しうる形に変容していったのだと考えられる。
では、1978年~1984年のポップカルチャーでは何が起こっていたのか?
それを検証するために、本書ではちょうどその時代に符合するかのように、1978年11月にファーストアルバムをリリースし、1984年4月に散開していったYMO(イエロー・マジック・オーケストラ1)にまず焦点を当てる。
約6年弱のこの時期に、YMOによってサブカルチャーはポップカルチャーにダイナミックに転換したと言える。
そのような視点から、本書はYMOの活動と深層を検証しながら、サブカルチャー〜ポップカルチャーの変遷を多角的に解明していく。
音楽だけでなく、アート、ファッション、映画、テレビ、アカデミズムなど多様なジャンルについて考察し、それらの有機的な繋がりを検証することで、この時期のポップカルチャーの特性を解明する。
さらにこの時期の都市開発、消費生活の変容も併せて考察していくことで、ポップカルチャーを取り巻く生活感、時代感覚を分析していく。