変わりゆく映像表現とその舞台裏
ハリウッド映画の特殊効果の分野では、黄金期だった80年代は特に、「パペット」と呼ばれる関節部が動かせる人形を一コマずつポーズを変えて撮影するストップモーションや特殊メイクをふんだんに使った映画制作が盛んでした。
しかし、90年代に入っていくと、「コンピューター・グラフィックス(CG)」や「グリーン・スクリーン」を使った撮影による「視覚効果(VFX)」技術が急速に発展していきました。
例えば、実写とCGの両方で作られたティラノサウルスが出てくる映画は皆さんも知っているのではないでしょうか。そう、『ジュラシック・パーク』(1993年)のような特殊効果と視覚効果を融合させる手法がハリウッドで増えていきました。今ではスタンダードになっていますが、この変化は映画制作の方法に大きな革新をもたらしています。
私が携わった『インディペンデンス・デイ:リサージェンス』(2016年)という大作SF 映画ではその制作技術がフルに活用されています。劇中に大群となって現れる、信号機のポールくらいもの高さがある「エイリアン・ソルジャー」の姿を表現する際には、触手と脚部を実物大で制作、残りはCGで表現することになりました。
製作側から提供された、3Dデザインで作成されたエイリアンの全身のCGモデルをもとに、発泡ウレタンの素材を削り出す機械を使っておよそ2メートルほどもあるエイリアンの脚部の形が作り出されました。
その上から、私を含め、アーティストたちの手作業でエイリアンのゴツゴツした甲殻類のような皮膚の質感を掘り込み、内部には「アニマトロニクス」と呼ばれる機械仕掛けの骨組みが組み込まれ、ラジコンで動かすことが可能でした。
しかし、驚くべきことに、これらの精巧に作られたエイリアンの実写の部分は、映画の中でほんの数秒しか登場しなかったのです。
それがハリウッド映画の世界の現実であり、私たちが作り上げたものがスクリーン上でどれだけ使用されるかは、最終的には監督や編集の選択に左右されます。ときにはまったく映らないこともありますが、それもこの業界の醍醐味の一つです。