第1章 ヒューマンエラーはなぜ起こる
4、拡張型ハインリッヒの法則
下記の図は人々の生活全般を例に、山に相当する事象をaccident(事故)という単語を使わず、あえて“トラブル”に置き換えて示したものです。
本来、人はヒューマンエラーを起こしにくいものです。日常生活の中で、実にいろいろな出来事に対して、ミスなく行動しています。逆の言い方をすれば、日々人はヒューマンエラーを回避しながら活動を行っていると言えます。
それでは、どうして人はエラーを起こすのでしょうか。それは、日々の活動の中で受けるマイナスの要因(SHELからの要因)が、人の脳にダメージを与えるからです。
人々の活動が“過酷であればあるほど”そのダメージは強力なものになります。マイナスの要因を受け、脳のダメージが増大します。
その結果、脳は間違った指示を出してしまうのです。そして発生するのがハインリッヒの山です。
ヒューマンエラーの結果は、時にヒヤリハットで止まり、ある時は軽微なトラブルを引き起こすこともあるでしょう。しかし、最悪のケースでは、重大なトラブルを招くことにもなるのです。これが、人の生活の中でトラブルが生まれる一連の流れです。
5、具体事例
人が普段の活動を行っている中でヒューマンエラーを起こす時、どのようにマイナスの要因が影響するのでしょうか。いくつか事例を挙げて考えたいと思います。
以下に示す事例では、m-SHELの中心となる“人”もしくは“関係する人物”について、実際に自分がそこで働いている様子をイメージしていただくために、あえて主となる登場人物を“あなた”に置き換えています。事例の中で実際に自分がその職務を実行しているつもりで、各事例の中の“どこに不整合があるのか?”を考えてみてください。
事例中にある“問題点”を探り出す方法と、明らかになった問題に対する改善策として具体的に何ができるのかについては、後の第3章の対策編の中で検討します。先ずこの各事例の中で“問題だと思ったポイント”や、“疑問に思った点”などの不整合を探してみてください。
考えるときのポイントは、各事例をm-SHELモデルに当てはめることです。そのときに、その職場の中で働く自分に対し、周囲のどの要素が自分に対してどんな影響を与えているのかを考えてみてください。