研修制度を司るJITCOが民間団体であり、監理団体や実習実施機関に対する実質的な指示命令権限がないことも、不正が横行する遠因ともなっていた。
外国人研修生や外国人技能実習生が正式に「技能実習」として滞在ビザが認められ、労働法による保護が適用されるようになったのは、2009年の入管法改正以降である。
「つまりこの制度は、Japan As Number One(JANO)の時代の象徴的成果ということだな。当時は日本に対して援助を求め、日本から学びたいと思っていたアジア諸国が多かったとゼミで勉強したが、日本が輝いていた時期だからこそ、皆があこがれていたのに違いない。
でも結局、理想通りには制度は動かなかった。今はどうなのだろう。技能実習生を受け入れている企業や日本に来る技能実習生は、今でも日本が輝いていると思っているのだろうか」
吉岡はしばらく考えた後、思い直した。
「自分がそんなことを考えたところでどうなるものでもない。4月から仕事を頑張るしかないな」
また吉岡は、時間をみつけては外国人が集住している地域や家からそう遠くないところにある外国人が居住している団地を、特に用事もなくふらっと訪れたりしていた。
楽し気に過ごしている人々もいれば、けんかのような言い争いをしている人々もいた。でもそれは日本人でも多かれ少なかれあることだろう。一方で日本にこれほど多くの外国人がすでに居住していたことには、率直に驚いた。
「いったい彼等は日本に何を求めて来たのだろう。金? 安定した生活? 治安のよさ?」続けて思った。
「自分は日本経済が絶頂だった時代を知らないけれども、今でも日本はアジアなどの途上国からは金持ちのいい国だと思われているのだろうか。父親は給料が全然上がらないと嘆いていたけれど」
「そういえば日本人の平均給与はバブル崩壊以来30年くらいほとんど上がっていないと聞いているけれども、自分はいくらもらえるのだろうか?」急に現実的なことを考え始めた。
「まあ、今から考えても仕方ないな。大事なのは仕事の中身だからな」そう自分に言い聞かせた。
さらに「そういえば、教育実習は何も考えずに母校で行ったが、こういう団地がある学校でやってもよかったかな」と、今にして感じる次第だった。
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