俳句・短歌 歌仙 2020.09.20 歌集「ひとり歌仙」より三首 ひとり歌仙 【第8回】 田中 靖三 “気がつけば超電導の虜なり” ――科学と日常を結びつける新しい文芸の形。 電気抵抗ゼロで世界に革新をもたらす夢の科学技術「超電導」。日々刻々と新しい技術に取って代わられる科学の世界において、人の寿命にも伍する100年以上の歴史を刻む「超電導」を、「5・7・5」の長句、「7・7」の短句を詠み重ねる歌仙方式で花鳥風月を織り交ぜ、詠いあげる。科学叡智の結晶「超電導」は、歌仙の響きと共にやさしく世界に溶けていく。 松尾芭蕉が作り上げたと言われるこの型式の、独吟による「ひとり歌仙」を連載にてお届けします。 この記事の連載一覧 最初 前回の記事へ 次回の記事へ 最新 指先も触れで零るるむかごかな 百年祭跳ねはや五年 新顔や風の噂の飛び交ひて 十八番台詞は超電導よ 花の雲この星ばかり棚引きぬ 東風に吹かるる晴れ着眩しき
小説 『毎度、天国飯店です』 【第6回】 竹村 和貢 サークル勧誘チラシの前で、『徒然草』を抱えた美人と出会った…。 天国飯店の定休日は毎週火曜日。アルバイト生四人で、月曜から土曜の間の五営業日を分担する。四人のうち誰か一人が二営業日に入る。その者以外の三人のうちの一人が日曜日に店に入る。日曜日は大学が休みなので、朝の十時から閉店の午後九時まで十一時間店に入ることになる。「ほな、俺、明日もバイトやさかい、おっちゃんに自分のこと話してみるわ。多分、おっちゃんも構へん言わはる思うねんけど」夏生は、「できない」とは思…
小説 『天命愛憐』 【第7回】 せと つづみ 「社会を変えれば、貧しい人たちは救われる」労働者の集会で…それって本当? 敬明と別れた帰り道、わたしはあることを思いつき、遠まわりして図書館へ行ってみようと思った。『告壇』を見たかったのだ。わたしは婦人雑誌以外は読まなかったが、学校へ通っていた頃は、たまにだが、図書館で本を借りて読んでいた。新聞はまともに読んだことはないが、なにが書いてあるかぐらいはわかる。たぶん。 図書館へ行く途中、広場で男の人たちが集会をしているのを見かけた。労働者の集会らしかった。『勝手に賃金を…