「圭司、僕だ。今日、行ってもいいか」
『おおー、久しぶり。いつでも待っているよ。来い』
いつもの低い声で。
僕は、いつも泊まりがけで行く。ビール、ウイスキー、おつまみを持って。圭司は料理上手だから食事は作ってくれる。誰かに話さないと爆発しそうだ。
「よぉ~、久しぶり。早く上がれ」
ホッとする。リビングに入ったら、ご馳走が準備してあった。
「さすが圭司、旨そうだな」
世間話をしながら、飲んで食べた。圭司が、
「何があった?」
「恋愛って、難しいな。苦しいんだな」
「君が、女性に振り回されているのかい?」
はぁ~、とため息をついて……。
「今、とても愛している女性がいるんだ。理想の僕より九歳年上で、苦しい程愛しているのに、追いかけると逃げるし、捕まえても手をほどくんだ。気持ちを伝えても受け入れてくれない。体の相性は抜群にいいのに僕を拒むんだ。どうしていいか分からないんだ」
「仕事の関係かい?」
「いや、安のバー・カッシュで、一目惚れしたんだ。時間をかけて、見ていた。声をかけて友人からスタートした。明るくて、素直で、優しく笑うんだ。僕は恋人として考えていた。プロポーズもした。だけど……流される。年の差が気になるようだ」
「昔から、結婚相手は年上の人と言っていたな。こんなに振り回されていても諦められないんだな」
「ああ、運命の人だ。この先、美樹のような人とは出会えない。どうしても結婚したい!」
「涼真、本気なんだな。相当惚れているな」
「ああ~、美樹だけだ。圭司、どうすればいい?苦しいんだ」と、気が付いたら、涙を流している自分がいた。ハッとした。
「両思いなのに、前に進めない状況なんだな。ただ、優しい女性は押しに弱い。涼真、ひるむな! 押して、押して、押し倒すんだ。伝えろ! 正直な気持ちを! 美樹さんも、迷っているはずだ。愛していいのか悩んでいるはずだ。誠実そうなようだし。年上がハンディだと思っているから気持ちを何度も伝えろ! 大丈夫だ」
次回更新は12月31日(水)、21時の予定です。
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