第1章 ヒューマンエラーはなぜ起こる
3、ハインリッヒの法則
皆さんは、“1:29:300の法則(ハインリッヒの法則とも呼ばれています)”を御存じでしょうか。米国のH.W.ハインリッヒ氏が、彼の著書“Industrial Accident Prevention、A Scientific Approach”の中で「仕事場において、重大な傷害を引き起こす事故の裏には、29件の軽微な傷害を引き起こす事故と300件の傷害に至らない事故(いわゆるヒヤリハット)がある」と述べたものです。
このハインリッヒの法則は、仕事場における事故の発生データを分析し、導き出された法則です。しかし、この法則は仕事場以外にも当てはめることができます。
私は、ハインリッヒの法則に示された山の周囲には、広大な裾野が広がっていると考えています。このハインリッヒの法則は、本来仕事場における事故について唱えられたものですが、“人の活動全てにおいて、ハインリッヒの法則が成り立つ”と思っています。
つまり、ハインリッヒの山には人々の普段の生活に相当するところの広大な裾野が広がっていると考えます。人々の生活がハインリッヒの山の裾野なら、その活動の中で起こったヒヤリハットや軽微なアクシデント、重大な事故がハインリッヒの法則で示すところの山の部分として現れてくるのです。