「あーん、亜紀が先に売った~」

「真由ってば。私の直ぐ後にあなただって売ったじゃない」

「そーだけどー。でもさ、朝から売れると気分良いよね」

「そうだね」

真由は性格が明るく、前向き。私はどちらかと言うと、溜め込んでしまう事もあるので、そういう時に彼女に救われている。

でもその一方で、真由の不倫相手である長澤さんとよく目が合うのが気になっている。気が付くと、私の方をジッと見て手を振ったりしてくる。真由はあまり気にしていないけど、じっとりと見られている時も結構あるので、それだけが……嫌悪感となっている。
 
ランチの時間になり、先に真由が昼食に入った。彼女が抜けた事で、長澤さんがフロアに入って来て接客を始める。

長澤さんも明るく、ユーモアのある人で、悪い人ではないとは思うけど、真由と不倫している事が何となく嫌だ。まぁ、二人の問題だから首を突っ込む気はないけど、長澤さんの視線には嫌なものを感じる。一応店長なんだから、そんな風に思うのは不謹慎かもしれないけれど。

「亜紀ちゃん、今からお昼のセールを始めるから、このPOPを店頭に置いてきてくれない?」

「分かりました」

私がPOPを受け取る時、さり気なくPOPと一緒に手を握られた。

「……っ!」

「あ、ごめん、ごめん」

「いえ。では置いてきます」