八月三十一日(水)
夜、仕事から帰ってくるなり孝雄が、
「何を書いたんや! 何てことしてくれたんや!」
と、血相を変えて私を怒鳴りつけた。私は別に公表したわけではないし、何をしたというのでもないのだが、悪行の一端が、とうとう社内の人の耳にも入ったらしい。
「じゃあ、自分は何してたん?」
と言うと、急にトーンダウンして、「そうか……」と。
九月八日(木)
「二人の女にメールしただろう! なんてメールしたんや!」
今度はどうやら、ひと月ほど前に知り合ったと思われる瑠奈さんと、最近仲良くし始めたばかりの明日香さんにフラれたらしい。実はこの二人に私は最近、また孝雄の携帯電話でアドレスを確認して、こんな内容のメールを送っていた……。
〈この人は結婚しています。独身と聞いていませんか?〉
が、しかし、私はあくまでも、心菜さんと晴香さんしか知らないふりをして言った。
「二人の女って誰!」
「……」
当然、口を割らず……。
この頃に、連日のように送られてきた孝雄からのメール。
〈二人の女性へのメールの件ですが、どちらも「奥さんが送ってきた」と言っていますが、景子はその二人が誰かも知らないのだから、アドレスを盗んでメールなんか絶対にするような妻じゃないと説明しました。もし違っていたら、僕の信用はめちゃくちゃになりますが、景子のことを信じます〉