渇望~弱みを最強の武器に変える~
某有名ラッパーの和訳したリリックにこういう言葉がある。
『知るためには傷つかなければならない。成長するためには落ちなければならない。得るためには失うこと。人生の教訓のほとんどは頭の中で学ぶものだから』
自分は表に出ちゃ駄目な人間だ。そうやって誰に言われたのかも分からず、誰にも言われてないかも知れないけど、頭の中に勝手にすり込まれ教えられてきた。恥ずかしい、ダサい、カッコ悪い人間だから。
東京はおかしい街だ。自分が何者かも分からない若者たちが集まり、語り、酒を飲み、笑顔の仮面を付けたのっぺらぼーは歩いてるとすぐに声を掛けてくる。眼前には誘惑と堕落が肩組み歩いて向かってくる。そんな事を知りながら若者たちは今日も都内を主役かのように闊歩する。脇役にもなれないのに。
自分もそれを知りつつ生きてきた。誰かの影が落ち着く。誰かが歩いた道の後なら怖くない。自分という物質がそこにあって、魂だけがないような感覚だ。
この日は都内で酒を飲んで帰るところ。終電ギリギリだが次の日は休み。1人になるとやっと魂が空っぽの体に戻ってくる。
電車に乗り、好きな音楽を聴きながら走り抜ける夜景を見てると、心と体がデトックスに向かう。視覚、聴覚、肌の毛穴からもさっき入れたアルコールが抜けていく。最寄りへ到着する時間を逆算しながら今夜流すプレイリストを作っていく。それを聴きながらぼーっと将来の事、なりたい自分を漠然と考えながら仕事の事と明日の遊びを考えてるってわけ。
いつも臆病な自分と、なりたい理想の未来の自分が2人いた。理想の自分を解放したかった。けど、それはこの時の自分では到底できなかった。
1章 中学・高校
理想からの逃避:『もういいかい?』
『まーだまだまだまだだよ』
この声は中学から聞こえるようになった。理想の自分が出てきたいなと言っているのだが、当時臆病だった自分にはまだ解放してあげられなかった。解放する勇気が到底なかった。
10分ほど家から歩いて着く中学。イジメられるのが怖かった。幸い、自分はかわいがられるタイプだった。背も小さく、細くて、白くて、タレ眉で、カッコ良くない。
自分は昔から大好きだった格闘家Y・Kみたいになれない。いや、少し当てはまる所はあるかも知れない。当てはまっても自分は強くない。タトゥーもない、筋肉もない。