「あ、花帆だ!」

と心の叫びと共に嬉しさがこみあげてきた。花帆がガラスドアを押して入ってくるなり美代子は奥まった席から手を上げて嬉しそうに合図した。美代子の仕草につられて結衣も後ろを振り向き、手を上げて左右に小さく振った。花帆は満面の笑みで二人の元に小走りでやって来た。開口一番

「二人に会いたかったよ」

と周囲に聞こえるような声で会えた喜びを体で表現していた。幸い、朝一ということもあり店内はまだ客もまばらで、彼女たちの声も気にするほどのこともなかった。花帆は花柄のワンピースにグレーのカーディガンをまとっていた。美代子が

「ワンピースの花柄がこの季節にピッタリね」

とほめた。

「ありがとう、店内は少し暖かいからカーディガンを脱ぐわね」

「花柄が肩口まであるのね。花帆は背丈があるから大柄の花柄が似合うね」

「馬子にも衣装よ」

と謙遜してみせた。

「美代子は英国仕込みのセンスが身に付いているからパンツルックもいかにもキャリアウーマンってとこね。結衣ちゃんはパステル画の美術部員ということで淡い色合いがお似合いよ」

三人はそれぞれの衣装に一通り感想を述べ合っていた時に、店員さんがオーダーをとりに来た。三人は顔を見合わせて美代子が

「私はいつものアールグレイにする。花帆はブレンドコーヒーよね。結衣は?」

と視線を向けると結衣が

「私も美代子と同じ紅茶にする」