俳句・短歌 句集 四季 2020.08.24 句集「抱く」より三句 句集 抱く 【第4回】 松永 みよこ ―春― 身に余るミモザ抱えて人を待つ 猫の恋吾よりいくばくかは清く ―夏― 膝頭抱いて鎮まぬ青嵐 幸せを温めなおす五月かな ―秋― 千の菊抱きてあまりにも一人 りりりるり鈴虫まねてけんか終ゆ ―冬― 雪うさぎ今消えゆきし身を抱き 酉の市ちがう男の手も温し 平成の句姫、みよこの初句集を連載にてお届けします。 この記事の連載一覧 最初 前回の記事へ 次回の記事へ 最新 踏み外すペダルの裏に春叫ぶ 弱きまま君立ち尽くすすみれ草 ぎこちなき口笛聞いて春の海
小説 『再愛なる聖槍[ミステリーの日ピックアップ]』 【新連載】 由野 寿和 クリスマスイヴ、5年前に別れた妻子と遊園地。娘にプレゼントを用意したが、冷め切った元妻から業務連絡のような電話が来て… かつてイエス・キリストは反逆者とされ、ゴルゴダの丘で磔はりつけにされた。その話には続きがある。公開処刑の直後、一人の処刑人が十字架にかけられた男が死んだか確かめるため、自らの持っていた槍で罪人の脇腹を刺した。その際イエス・キリストの血液が目に入り、処刑人の視力は回復したのだという。その槍は『聖(せい)槍(そう)』と呼ばれ、神の血に触れた聖(せい)遺物(いぶつ)として大きく讃えられた。奇跡の逸話(…
小説 『高校生SM 』 【新連載】 大西 猛 あの人は私を磔にして喜んでいた。私もそれをされて喜んでいた。初めて体を滅茶苦茶にされたときのように、体の奥底がさっきよりも熱くなった。 さっきよりも空が暗くなったと思ったら雨が降ってきた。頬に、額に、冷たい雨の粒が落ちた。零下に近い空気で冷やされたその粒は今にも雪に変わりそうだった。私は自然と急ぎ足になった。その建物の前を通ったとき、雨脚が強まった。急ごうと思った私だったが、十字に光るそのオブジェを見て急に止まった。十字のオブジェは金色のメッキがされており、電飾などないはずなのにそれ自体が光をまとっていた。私はそれが十字架だと気…