それから彼は毎日私をデートに誘う。一回食事でもしたら、諦めてくれるかな、私の考えは浅はかだった。彼と食事の約束をした。

「本当ですか、俺とデートしてくれるんですか」

「デートじゃなくて食事ね」

「先輩、愛し合う男女が食事することをデートっていうんです」

私は大きなため息をついた。

「誰と誰が愛し合ってるの」

「俺と沙優」

急に真顔で名前を呼び捨てにされて、胸がキュンとときめいてしまった。休みの日の朝、圭人と待ち合わせをして、ドライブに行った。圭人は運転中に私の手を握ろうとする。

「ちゃんと運転に集中して」

そう言って私は圭人の手をハンドルに戻す。

「沙優に触れたいよ」

「あとでね」と、かわす。

「本当にあとでね、約束だよ」

圭人はいつも少年のようにニッコリ微笑む。レストランで食事を済ませて、車に戻ると、圭人はエンジンをかけずにじっと考え込んでいる。

「どうかしたの?」