Ⅲ.心臓発作と脳溢血から生命を守るために

2 原因物質特定への道

生体内産生物質で、死をも招くほど激烈な作用を有する物質は何か

そして、両発作発症時には患者の血液中にチラミンが出現します(平時の人間の血液中にチラミンは検出されない)。そして、それとともに尿毒症の様々の激烈な症状が認められるようになります。また、血液が酸性化するほど血液中のチラミンの量が増加することも確認されています。

このことから、腐敗の度合いが高度な糞便ほど酸性度が強く、また、チラミンの産生される率も高まるということを示すと判断できます。

以上から父は、両発作の根本原因物質は、腐敗発酵が高じて強酸性状態となった腸内で食物の不消化残渣中のタンパク質が細菌性に腐敗した際に生じるタンパク性アミン類、および、そ のタンパク性アミン類の一種であるドーパミンが血液中に吸収され、これに副腎酵素が作用して生じるアドレナリンと、酸性物質およびガスだと結論することができたのです。

なお父は、高度に腐敗した腐敗便中のなんらかの物質が両発作の原因物質であるに違いないという判断に、今から60年以上も前に達しておりました。

それが、チラミン、ドーパミンをはじめとする交感神経類似アミン類および、交感神経類似物質のアドレナリンこそが両発作の根本原因物質であると、その正体の化学物質名まではっきりと特定できたのは、以下に記すような研究成果に接するという幸運に恵まれたからです。

エル・アルファ・メチールドーパという物質が、腐敗菌の持つ脱炭酸酵素の能力を阻止し、循環血液中のチラミン値を減らして降圧作用を持つことが、J・A・オーツらによって1960年に論文報告されました(チラミンは強力な血管収縮作用を持つ物質であるので、その量の減少は血圧降下をもたらす)。