事故の知らせ
私達は、担当の看護師に私達の携帯番号を記入したメモを渡してから、集中治療室を退出した。
そのあと、院内の携帯電話が使用できる待合所に移動してみると、テーブルとイスが置いてあったので2人とも着席した。そして、自動販売機で買ったお茶を飲んだ後で、雄二から私に話をし始めた。
「ついさっき職場に連絡して、今日は休みをもらったから時間的に余裕ができたよ」
そう言ってから、ゆっくりとイスに座りながら背伸びをした後で、再び話をし始めた。
「ところで母さん、直美姉さんがもし、最悪の事態になってしまったら、どんな準備をするつもりでいるの?」
「もし葬式をとり行う事になったなら、必ず連絡しなければいけないのは、私が入信している宗派の僧侶と私の実家にいる姉夫婦とあなた達の元父親でしょうね」
「母さん、なぜあの男になんか連絡しなければいけないのだよ。直美姉さんも僕も、あの男を実際の元父親なんて認めていない事は、母さんもよく分かっているじゃないか」
「それは、あなた達の言動を長い期間いろいろ見てきてよく分かっているけど、あなた達の遺伝子に半分、元父親の遺伝子が入っている事は、まぎれもない事実なのよ」
「もし、僕の葬式にあんな男を参加させるくらいなら、葬式なんかしてもらわなくてもいいと考えている。直美姉さんも同じ気持ちに絶対なるよ。僕には分かる」
どうして雄二と直美は、ここまで元父親に対して嫌悪感を露わにするのか。
すべては、私が子供達の元父親と結婚した事から始まる。