不思議な少年との出会い

今井さん、座談会形式講和

時間の十分前に着いた。

「今晩は。今日はよろしくお願いいたします」

と顔を上げたら、

「アッ! 山本さん。どうしたのですか?」

「吉岡は大学の同期で会わせたい方がいると呼ばれて来た」

「やはり、縁がありますね、アハハハハ」

「今井さん、今日はよろしくお願いいたします」

「僕は特別な話は出来ません。経験と実績だけの話をいたします」

と始めた。

「両親が中学校の教師の間に生まれ、すくすくと育ちました。母は国語教師で漢字、言葉遣いそれと本を読む事を叩きこまれました。父は数学教師で算数の楽しさを教わりました。

十歳の時最愛の母を病気で亡くし、父が中学校の教師をしながら大学まで行かせてくれ、父の期待に応える為、必死に頑張って志望校に入り、卒業と同時に父の勧めで二年間、ボストンへ留学し、仕事も決まり、親孝行をこれからという時父が他界。

ショックでしばらくは力が抜けて何も出来なかったです。一人になったと思ったら寂しくてたまらなかったです。でも時間は進み前を向いて歩かなくてはと仕事に没頭しました。

その時に出会った上司が素晴らしい方でした。その方は高卒で仕事に対する姿勢が素晴らしかったので僕はいつも上司の後を追って仕事を覚えました。

四年間学んで、仕事とは努力と忍耐、計画、アイディア、僕はいい大学を出ていることでエリートコースに乗れると思ったのが大間違いでした。高卒、大卒関係ないと思いました。

その人です。人材です。五年後、その上司が退職したのを機に僕も退職し、起業することに決めました。不動産会社を設立し、今の専務と二人三脚で十年突っ走りました。

ようやく軌道に乗り、社員も五人になり、これから十年の計画を立てながら、専務とケンカもしながら打ち合わせをしていると意見が合わず『お前なんかやめちまえ!』と暴言を吐いてしまいました。

専務が『嫌です! 僕は社長に命は預けられないけど、仕事の人生を懸けています。だから絶対にやめません。何があっても社長についていくと決めています』

僕は突然の言葉に

『勝手にしろ!』

と会社を飛び出し、車の中で号泣です。仕事で男泣きは初めてでした。それからです。自分の為でなく、会社の為でもなく、社員の為に頑張らなくてはと思い今日まで来ました。