紳士的でお金持ち、見た目も悪くないとくれば理佳子には断わる理由など無かった。寧ろ心のどこかでデートを望んでいたようなところもある。
親子ほども年齢の離れたカップルではあるが、今はそんなことも全く違和感が無い時代なのか、お店でも街中でも誰からも妙な目で見られたりしない。
最初のデートは関内の寿司屋だった。
理佳子は、相手の風貌からフレンチにでも行くのかと思ったが、もちろん和食も大好きだ。その店は特に今風に凝った工夫をするわけではないが、ネタの目利きで知る人ぞ知る有名なところで、名前だけは聞いたことがあったが食事をするのは初めてだった。
相手の男性は慣れた様子で大将と言葉を交わし、軽めに肴と煮物、焼き物などを注文し、その後お任せで五、六カン握って貰う。
もちろん理佳子にも好みを聞き、大将と自分のお勧めを説明してくれたりした。酒はあまり飲まないらしく、小さめのグラスでビールを飲んだあとは冷酒を一合飲み、理佳子もお付き合い程度に少しだけ飲んだ。
振る舞いは上品で洗練されており、女性の扱いも上手かった。タクシーを拾い、理佳子の家の近くまで送ってもらったが、車の中で軽く手を握るくらいで、それ以上のことは無かった。
二回目のデートは横浜駅に直結するビルの高層階にある、有名なシェフの名を冠したフレンチレストランで、多少のワインも飲んだところで、
「僕は理佳子さんがとても好きだよ。僕と付き合ってくれないか。もちろんそれなりのお礼はするつもりだよ」
と言われ、理佳子はうなずいたのだった。
お礼は都度でもいいし月極でも、ある程度まとめて渡してもいいと言われ、一回の大人デート毎に五万円貰うことになった。
最初の頃は月に二、三回ほどデートをし、理佳子も男性もお互いの立場を理解した上での付き合いに特段の不満も無かった。食事とホテル以外に出掛けることは殆ど無かったが、理佳子はそれで良かった。