一層、小さい塊になっていた次男の硬くなった体をさすり、お風呂に入れた。ようやく次男は笑えるようになった。

「もう二度と離さない、この子を取り返す」と誓った。子どもも「お母さんと離れたくない」と言った。

「あかねこ」、父親との別離

次男は、もうどちらかの親を選ぶしかなくなったことを理解した。試験外泊(やっぱり腹が立つ、この言葉)二度目にして次男を奪還した。後は長男だ。ただ、受験を目前に控えている。過酷すぎる。

しかし、次男と共に、家のベルを鳴らし、長男を呼び出した。夫が怒っていた。次男と二人死ぬ覚悟だった。何も怖くなかった。夫はあろうことか警察に「不法侵入の妻を捕まえてくれ」と通報した。

不法侵入の妻? 何それ? けれど、事情をすべて知っている警察官の方が泣きながら「だから奥さん、我々には助けられない。どうか事件が起きる前に遠くに逃げてくださいと言ったはず」と説得され、私たちも泣きながら引き下がった。

けれど、長男はまだ正気だと確認した。長男の奪還計画実行。私と次男のアパート近くの部屋を借り、独立成功。

このいくつもの引っ越しと新生活の準備だけで私の貯金は底をついた。北海道にしては暑い夏だった。クーラーのない部屋で次男と二人、熱中症になりそうだった。