滲んだ青

ただいま、って感じだ。2年前を最後に味わうことがなかった瞬間に、ようやく戻ってこれた。待ちに待った42.195kmの1歩目の感覚を、これからずっと忘れたくないなあ。

ウィーンマラソンはその名の通り、ウィーンの全部お見せします系のマラソンだ。シェーンブルン宮殿の前も、ステファン大聖堂の前も、キプチョゲがフルマラソン2時間切りをしたプラーター公園の中も、とにかく見どころを詰め込んでる。

レース開始して2kmほどで、コースはプラーター公園の中に入るのだけれど、入り口くらいの辺りで木々の隙間から流れてくる陽気なEDMが耳に入りこんできた。ウィーンマラソンはradioFM4、ウィーンのラジオ局もスポンサードしているようで、ラジオ局によってDJブースがしっかり用意されている。しかも結構手の込んだ作りで、ブースの色が光ったりもしていた。

2km地点はまだどのランナーも余力をしっかり持っている。DJに手を振ったり、叫んだり、小刻みに揺れたり、それぞれの形でEDMに呼応していた。ちなみにこのDJブース、ここだけじゃなくて、2、3kmごとに現れた。しかも各々コンセプトがあるのか、アヒルのどでかいバルーンに囲まれてるDJブースもあって、めちゃくちゃ可愛い。

森を抜けると街中に入るのもあって、沿道の人はさらに増えて、歓声もそれに比例して大きくなる。

この日はコース上のトラムを全てストップさせるから、普段トラムが走る線路の中を走れたりもする。日本だと法律に引っかかるのかもしれないけれど、こっちではそんなのを規制する法律もないみたいだ。しかも路上飲酒がオッケーなのか、ビール缶を片手にゴミ箱の上に乗って応援してくれる大学生とかもいて、とにかくフリーダムだった。

街中を走っていると、応援しながら沿道に立つ人が、子供だけでなくて大人も、手を伸ばしてハイタッチをしてくれた。このハイタッチ、欧米ではよくやってもらえる応援方法の一つで、理由はよくわからないんだけど、してもらえるとめっちゃ元気になる。

パンデミックのあとだから知らない人との接触は避けられたりするのかな、なんてぼんやり思っていたけれど、全くそんなことはないようで、たくさんのキッズ、大人がハイタッチしてくれて、そのたびに手に伝わる温もりが、力になって足が少し元気になった気がした。