「すぐ用意するから、ちょっと待ってて」

お母さんは、そう言って冷蔵庫をあけると、中にはタッパーに入ったたくさんの煮しめがあった。

「おぉ、煮しめだ! これ食べようよ!」

お父さんが、後ろからハツラツとした声で言った。

「お母さん、わたしも煮しめ食べたい!」

れいちゃんもお父さんに続き、ハツラツとした声で言った。

「そうね。よし、今日は煮しめパーティーにしましょうね」

「やったー」と、喜ぶわたし。

「よっしゃー! やったぜ、煮しめだ煮しめだ!」と、なぜかわたしよりも嬉しそうに喜ぶお父さん。

「あれ? お父さんって、そんなに煮しめのこと好きだったっけ?」

すると、お父さんは、懐かしそうに煮しめを見つめて言った。

「うん、好きだよ。一番好きかな。だって、煮しめには特別な思い出もあるしね」

「そうなんだ。うふふ」

わたしは、思わず笑みがこぼれた。その夜は、家族3人で煮しめパーティーを楽しんだ。

わたしにとって煮しめが特別なものになったし、もっと大好きになった。

 

〈冬〉

今日は小学校の遠足。天気は曇り。朝、お母さんは、早起きをしてお弁当を作っていた。

「おはよう、お母さん」

「おはよう、れいちゃん」

わたしは、まだ眠たい中、台所へ行くと、そこにはわたしの大好きな煮しめがあった。

「ひゃぁ、煮しめだ!」

「今日のお弁当は、煮しめでよかった? ハンバーグとか、からあげにもできるけど……」

と、お母さんが聞く。

「ううん、煮しめがいい」と、わたしは、煮しめを見て笑顔でそう答えた。