第二部 伝えたい幸福の道しるべ16の事柄

人と比べない人になれる

あの日の夫の出来事からしばらくは食事も作れずにいた。夏休みの長男。長男に何食べたいか尋ねたら寿司と言ったからチェーン店の寿司屋に入った。

夫と背格好が似ているスキンヘッドのパパさんを見て涙が溢れた。歩いてるから羨ましかった。震えるほどやり場のない感情が溢れてきた。一口も食べられない。羨ましがっても目の前は変わらないのに。

ただ、日が経つにつれ、変わらない現実を受け入れた瞬間があった。夫の姿は歩けないまま。受け入れようと無理をするからしんどいことに気がついた。だったら無理に受け入れるより受け入れられない自分を受け入れ、事実を受け止めながら、生きていけるようになった。

羨んでも一歩も進まない。自分でしかなせない役割だってあるはずだ。肯定的な比べ方ならいいのではないか。あの人の良さ、彼の良さをひたすら探した。個々に得意不得意はある。彼は身動きは不得意になったんだと呪文のように唱えた。

ある人は幼少期から勉強することが得意。でも、苦手なものがないわけじゃない。ものすごい偏食かもしれない。もしかしたら勉強しかなかったかもしれない。なのに見たまま羨むのは不自然なこと。比べて劣等感を抱いたとしても楽しく過ごせば何か生み出せる可能性は大いにある。