カッサパは続けた。

『ゴータマさま、これは決して嚇しではございません。お気をつけ下さい。国の王や、長者と呼ばれる商人が、力をつけてきているとはいえ、まだまだ、バラモンを侮ってはなりませんぞ。利益を失うとなると、バラモンはどんな手を打ってくるか分かりません。』

〈わたくしは真のバラモンを求めているにすぎない。昔のバラモンは自己を慎しみ、修行に専念していた。人々に財を要求することはなかった。今、バラモンは享楽を求め、女を求め、食べ物を求め、財を成すことに精を出しているように見える。〉」

ウルヴェーラー・カッサパには二人の弟がいて、彼等も多くの弟子を持っていたが、兄と共に、その弟子たちを連れてゴータマに帰依したという。

カッサパ三兄弟は当時の大国マガダにおいて名声が頗る高かったので、彼らの帰服はゴータマにとって大きな出来事であった。在俗信者も着実に増え、ゴータマの名声はマガダ国王ビンビサーラの確認するところとなる。

ビンビサーラはゴータマより5歳下だと伝えられている。王はブッダとなったゴータマとの再会を喜び、ゴータマに深く帰依し、ラージャガハの北の、町から遠からず近からずの所に、竹林園を寄進する。また、王はラージャガハを囲む五山の一つ、ギッジャクータへの参道を整備したという。

竹林園でのゴータマたちの清々(すがすが)しい起居振舞を見て、心動かされた地元の長者が、自己の福徳を願って、竹林園に精舎を寄進する。これが竹林精舎で、仏教教団における最初の精舎であるという。

これによって、ゴータマたちはラージャガハでは野宿することがなくなったと思われる。これは大きな拠点を持ったということであろう。

もう一つの大きな拠点は、翌年寄進を受けることになる、コーサラの祇園精舎 (ぎおんしょうじゃ)である。これによってゴータマの活動はコーサラにも及ぶことになる。

【前回の記事を読む】世間の人々は財を蓄えることが安楽、無一物が苦しみと考え、聖者は無一物が安楽とみる

 

【注目記事】あの日深夜に主人の部屋での出来事があってから気持ちが揺らぎ、つい聞き耳を…

【人気記事】ある日突然の呼び出し。一般社員には生涯縁のない本社人事部に足を踏み入れると…