「ということは、健太は乗ってなかったんだな。なんでそれを早く言わなかった」

間があった後、健太は「言えなかったんだよ」と元気なく言った。

「なんで!?」

つい強い口調になる。

「わかった。真犯人に脅(おど)されたんだな? 誰だ?」

「そのくらいにしとけよ。刑事の取り調べじゃあるまいし」

赤星先輩が諫(いさ)める。

「真犯人なら目星はついてるさ。襟足がちょー長いヤンキー」

絆創膏は喧嘩の勲章ではなかったのか。

「ちょっと待ってください。それが事実なら警察がとっくに逮捕してるでしょう」

「してないからこうして今、懸命に調べてるんじゃないか。あいつら、被疑者がわかっているからと、血痕を詳しく調べる必要性がないと判断したのかもしれないな」

あのとき赤星先輩が首を捻ったのは、こうした理由があったのか。

「見つけたぜ」

赤星先輩が喜々として、空いた手で地面を指した。眉をひそめつつ、俺は黒い布切れで覆われた箇所を覗き込んだ。

「ホントだ。青白いものが光ってる」

「たぶんヤンキーの血痕だな。事故当時、ミネラルウォーターで薄め、現場を綺麗に洗浄したみたいだが、見てのとおりルミノール反応が出た」