ベテランの仕事術に学ぶ

中国の知り合いは漢方薬が専門の人でしたが、電子部品に強い人と組み商売しようとしました。そこで、このHMD製品のコントローラーも日本で作ってくれるかを商社の担当者に相談すると、福井県大野市にある北伸電機株式会社を紹介してくれました。

何軍、商社の担当者、私、薛蔚、北伸電機の細川社長、雷涛

北伸電機は電子回路基板を作っているので、HMD製品のコントローラーを作れるということです。技術者出身の細川社長は中国が大好きな人で、年に何回も中国を訪問し「協力してあげる」と言われました。大変心強く思いました。

そこからスタートして、二見専務・細川社長らは西安や深圳(しんせん)へ何度も行き、中国の知り合いと直接会ってこの製品の計画・資金・輸入手続きなどについてよく打ち合わせをしました。

私は中日両方の通訳を担当しながら、何十年間も商売しているベテランの二見専務や細川社長の商売の交渉・仕事の進め方・打ち合わせ方・話し方など、商売の仕方全般を実務で勉強しました。

中国側はS社のHMD製品を買って中国市場の反応を調査しました。この製品は0・7インチのLCDチップを使ったわずか200グラムの重さの製品です。頭にかけると約2メートルの距離に52インチの大画面が見え、当時中国ですごく流行っているDVDプレーヤーと組み合わせて、映画を楽しむことができました。

その頃中国には新幹線はなくて、電車もよく遅れて、国内での出張は30時間かかりました。したがって、HMD製品はビジネスマンや長い旅の人々にとっては大変珍しくて良い物で、中国のいくつかの展示会やイベントなどでは市場調査を行っても、反応が大変良かったということでした。

なかなか売れない

そのときS社の製品は電機屋さんでの小売りは約20万円でしたが、製造コストを計算したら5~6万円しかしないので、必ず売れると思いました。

当時世界中はインターネットショッピングもなかったので、中国では安売りの心配は全くなかったのです。中国国内の電機屋さんも売りたいということでした。

中国側は日本へコントローラーの開発費を支払って、北伸電機は製品の開発を進めました。商社はS社と交渉して、数ヶ月かけて、やっと数人の役員のサインをいただき、液晶チップを何とかして入手できるようになりました。

ただし、液晶チップは大変高額で3000万円ほどが必要です。日本で調達した部品をすべて中国に輸出したら5000万円ほどの利益が出ると想定できました。こんなに儲かると思うと、かなりワクワクしました。

【前回の記事を読む】アイデアやヒント、感想はすぐノートに書く! 「人事尽くして天命を待つ」

次回更新は4月28日(日)、12時の予定です。

 

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