辛い経験から経営の難しさを知る

その後酒井社長の会社は、もう一度福井の大きな取引先の倒産で、本当に倒産する危機がありましたが、前向きな姿勢と明晰な頭脳および正確な方法で乗り越えました。それ以降ずっと安定した経営となりました。

私が酒井社長と知り合ったとき、仕入先は7000社ほど、取引先は9000社ほどあり、商品数は数万点、売上高は400億円、全国に自社ビルの拠点が35カ所、連続40年間黒字決算だそうです。本当にすごい管理システムと経営方法を持っておられます。

 酒井貞美社長(この時93歳でした)

酒井社長は「会社は本当に倒産する恐れがあったからこそ、経営の大変さをしみじみと感じている。やっと乗り切って、安定した経営を目標とした」と言われました。

辛い経験があったから経営の難しさがわかり、酒井社長は会社を守らなければならないから日曜・休日も関係なく、ほぼ一年中365日会社に出勤して仕事していました。出張中またはお正月でも会社のことを考えていました。

奥様によると、お正月に一家で「あわら温泉」に泊まったとき、朝早く起きて会社に行ってからまたホテルに戻って過ごしたということです。このように社長としてはやはり会社を守る強い気持ちを表しています。

日本最高齢の社長

酒井社長は日本経済新聞等毎日五つの新聞を読まれたり、感想文を社員にファックスで送られたり、電話で指示されたりしました。

創業者として2020年10月までは日本最高齢の96歳の現役の社長として大変有名でした。その以降会長になられて、命の最後までも経営に関わって、2021年4月9日逝去されました。

酒井社長は化学の専門ですが、なかなかユニークな哲学を持っておられます。しかも私と同じネズミ年で、36歳上の大先輩です。親しく感じて、お宅へよく伺いました。

雑談中は、創業されたときの苦労話や失敗話や楽しい話を聞き、また創業以来の足跡をまとめた轟産業社史をいただき、しっかり読んだりしているうちに、「会社の経営者は哲学者や学者でもある」ことが初めてわかりました。

酒井社長は会社の経営に専念して、人生に対する見解も鋭いことで、様々な知恵を教えてくださいました。

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次回更新は3月17日(日)、12時の予定です。

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