俺はひとつ注文をつけた。

報告は赤星先輩にしているのである。三人とも顔が真っ赤で、酒が抜けていない。そんな状態で聞き込みできたのは、ある意味すごいけど。

「ごくろうさん」

赤星先輩は三人を手なずけていた。約三十年ぶりに再会したというのに。子供の頃の上下関係は大人になっても変わらないのかもしれない。けれど、俺は赤星先輩の手下になるつもりはなかった。

「とりあえず、礼を言ったら?」

赤星先輩が促してきた。俺は通報者の中年女性に近づいていくと礼を言い、頭を下げた。

救急車を呼んでくれたことに対して。健太のメンタルも心配だが被害者のほうがもっと心配である。命に別状がなければいいのだが。

中年女性は地方のヤンママといった風貌で、長い茶髪をなびかせながら「当たり前のことしただけ」と謙遜して言った。彼女の後ろにはこれぞ田舎のヤンキーという感じの、襟足を極端に伸ばしたスポーツ刈りの少年がいて、こめかみや腕に絆創膏を貼っているのが見えた。喧嘩でもしたのだろうか。

「おーい、ウブ平」

赤星先輩の呼ぶ声。

「健太くん、怪我なかったって。よかったな」

健太の奴、赤星先輩には心をすぐに開いたんだ。へえー。赤星先輩はどのような魔法の言葉をかけたのだろう。俺は感心したのも束の間、健太がすすり泣き始めた。