今日の遠足は、みんなでお城の近くの公園まで行った。行く途中に熊本城の姿が見えてきた。熊本城は、屋根瓦は禿げ落ち、石垣はそこらにゴロゴロと転がっていたり、足場や城壁は鉄骨で囲まれていたりと、未だ震災の傷跡が目立つ。
だが、前に来た時より熊本城が少し変わって見えた気がする。少しずつではあるが、復興に向けて懸命に頑張っている。熊本城の存在はわたしにとって希望そのものであった。
公園に到着すると、お弁当の時間になった。
みんな、敷物を敷いて、それぞれリュックサックからお弁当を取り出す。
みんなワクワクしながらお弁当箱のフタを開けていく。(何かな、何かな~)
わたしは中身が何かわかっていても、ワクワクしながらお弁当箱のフタを開けると、そこにはあの味の染みた美味しそうな煮しめの姿があった。
「あ、れいちゃんのお弁当、あれだ!」
「うわ、ほんとだ。また持ってきてる~」
「ねぇ、その食べ物、なんていうんだったっけ?」
また、みんな変な目で見てきた。でも、わたしはもうみんなの目や、またからかわれるのかなとか、そんなことは気にしないよ。だって、わたしは、お母さんの作る煮しめが大好きだ。
すると、突然、向こうから男の子が泣く声が聞こえてきた。かんたくんだった。かんたくん、どうやらお弁当を忘れたらしい。わたしは、お弁当箱を持って、泣いているかんたくんの元へ駆け寄った。
「ねぇ、かんたくん、もしよかったら、わたしのお弁当少し分けてあげる」
かんたくんは、泣き顔でわたしの方を見た。わたしは、お弁当箱のフタに煮しめをのせて、かんたくんの前に差し出した。
すると、かんたくんは、お腹がへっていたのか、以前、わたしと煮しめをからかったことを忘れたかのように、煮しめをパクパクと食べ始めた。