いつの間にか目を瞑って寝ていたらしく、臭い変な臭いが微かに鼻を襲った。
何だろう? と思って周りを見ても今迄と変わらず、レールの音がするだけ、一方で左前に座っていたビジネスマンが、席にもたれ帽子を深くかぶり寝ていた。
どうやらこの臭いは、そのビジネスマンの辺りから臭っているように思える!
何だろう? と思って、そっと近づいてみると臭いが次第に強く成っていく……。
寝ているのに声を掛けるのは……と思いながらも、既に手が相手の肩に触り、軽く叩いていた。
男は、全く目を覚まさず帽子を深くかぶり、ぐっすりと寝込んでいるようで上を向いて寝ている。
首のネックレスが不釣り合いに光っていた。
確かに何か腐ったような臭いが、男から臭ってくる! 意を決して、
「大丈夫ですか?」
と肩を揺すってみるが全く返事が無い。
「もしもし!」
ともう一度、強く肩を揺すると、被っていた帽子が落ち、太いゲジゲジ眉で目を瞑ったままの赤い顔が出てきた。
全く反応が無く、おかしい? 急に不安を感じた浩は、息をしているのか? と鼻に手を近づけたが、息を全く感じなかった。
ひょっ! ひょっとしたら死んでいるんじゃ? と思った途端、びっくりして後ろへ飛び下がった。
しっ! 死体! 何故か身体が、細かく震えてくる。
そのままじっと見つめ、もう一度確かめようと近づき、手首の脈を診た。
何処を触っても、棒のようで全く何の動きも感じない……本当に死んでいる!